ポアロ@住宅街!
隣近所を巡りながら、噂話を聞いて歩く。この街、なんか変じゃない!?
といっても動き回るのは警部と諜報部員で、ポアロは安楽椅子に座り小説を貪り読んでいるのだけど。そのポアロの口を借りて展開される推理小説論がすこぶる愉しい。
大仰な事件の仕掛けと、それの解決される顛末は、古今東西の小説で繰りひろげられる、奇妙奇天烈なトリックを嘲笑うかのよう。
晩年のクリスティーは、自ら創りあげたミステリの枠組みそのものを破壊しようと腐心していたようにおもえる。
枠の、本の外側へ!
ポアロだって時には外へ出たくなるのだ。
アガサ・クリスティー『複数の時計』
Agatha Christie, The Clocks, 1963
橋本福夫訳 / ハヤカワ・クリスティー文庫 / 2003