読みたい本が多すぎる

読みたい本が多すぎる。されど人生は短い。

『ハロウィーン・パーティ』アガサ・クリスティー(中村能三訳)

アガサ・クリスティーハロウィーン・パーティ』を読む。中村能三訳。ハヤカワ・クリスティー文庫(2003.11)。昨年のハロウィーン前後に一度読んだが、順番が回ってきたので改めて読む。前回はポアロ世界にまだ慣れておらず、話のややこしさもあって途中で迷子になったが、今回は愉しく読めた。

 

事件の裡には過去のコールドケースが四件くらい隠されている。以前に殺人現場を見たことがある、と吹聴していた女の子が殺される、と云うポアロのなかでもとりわけ痛ましい事件で、『死者のあやまち』と『マギンティ夫人は死んだ』を重ね合わせたようなお話、といったところか。女の子には虚言癖があり、真実かどうかの疑わしいなかポアロは捜査を進める。信頼できない語り手ならぬ、信頼できない被害者、目撃者である。


ポアロもクリスティーも年を重ね、シリーズもこの後期のころは少し捻った展開が多く、いろいろ模索していたようにおもわれるが、この小説は原点回帰!と云った印象で、正統なミステリとしての味わいがある。やはりポアロは関係者の証言を聞いて回って、過去を掘っていく話が合っている。


原題は“Hallowe'en Party”。1969年の作で、クリスティー最晩年のポアロだ。初訳は1971年と云うからずいぶん経つが、読んでもさほど古さはかんじなかった。近く新訳が出るらしい。こんどは山本やよい訳。『オリエント急行の殺人』や『五匹の子豚』など、代表作の翻訳を手掛けているが、さて本作はどうか。児童書ではすでに昨年、本作の翻訳を出されているが、大人向けのクリスティー文庫は、まさか同じじゃないよね? 出たらまた読む。


近々映画にもなるらしい。というか、映画の公開に合わせて新訳が出るのであろう。ケネス・ブラナーポアロで、タイトルは『ベネチアの亡霊』。てベネチア要素あったっけ? イギリスの庭園が重要なアイテムなんだが。庭園文化のルーツはイタリアだから、まあいいのか。ブラナー版ポアロは『オリエント急行殺人事件』を映画館で観て、まあ、あれはあれで良かったのだけど、いまはデヴィッド・スーシェのポワロを観ちゃってるから、もうほかは違和感しかないかも。そのスーシェのポワロでも近々本作の再放送があって愉しみだ。て気づけば僕も『ハロウィーン・パーティ』の箱庭に閉じ込められてしまっているのである。

 

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