SNSでユルい交流のある読書の先輩で、日ごろは主に海外文学を読まれているのが、めずらしく新書を読んでおられたのをお見かけし、興味がわく。
何でもたいへんな売れ行きらしく、発売間もないのに手元にやってきたのは再版であった。
言語とは何か、子どもは、AIは、どうやって言語を習得しているのか。あるいはおなじことだが、言語はどう進化したのか。
ちょうどいま我が家には、言語を習得しつつある子どものひとがいて、日々新しいことばを、言えたり間違えたりしていて飽きない。いま読めばいっそう愉しめるはず、とさっそく手に取る。
言われてみれば一つひとつは当たり前のことばかりが書かれている。学問とは多かれ少なかれそういうものだけれど、そこから繋がれる物語は驚異に充ちみちている。
何しろ読んでる途中で、ちょっと泣いたのだ。新書なのに、である。
我が家の一歳を少し過ぎた、まさに言語を習得しようと奮闘する子どもの、漕ぎだそうとする言語体系という大海原は、あまりに巨大で、その航海は如何に困難を窮めることか。
それらを子どもは(おそらくだが)平然とやってのけようとしている。
スポーツを観て、人類の偉業に涙することがある。この本から享けるのは、その種の感動に近い。
人類だけが言語を獲得できた。その鍵は〈誤り〉にある。誤りを犯すことで子どもは、ひとは言語を習得できるのだ。
僕ら大人が、子の誤りを訂正する。他者との遣りとりが言語の役割であるならば、その修正の過程こそが、コミュニケーションの第一歩なのかもしれない。
うちの子どものひとにも、いっぱい間違えてほしいとおもう。
今井むつみ / 秋田喜美『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』。
中公新書 / 2023年。
新聞の書評を読んでいたら、隣に並んでいた新書も全くの別分野ながら〈誤り〉という点で繋がりがありそうで、興味がわく。いずれ読みたい。
因みに読んだ書評はこちら。